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◇ 七章 マギカルトが使えなくとも
 

 アラトとナキリは、ひまわり組の教室に待機する。しばらくすれば、先生に引率された子どもたちが入ってきた。

「みんな、お疲れ様! いい演技だったよ!」

 ナキリが笑顔で出迎える。子どもたちも笑顔で応え、次々に衣装や道具を片付け始めた。

 アラトはその中からソウタを見つけると、駆け寄った。

「ソウタくん、おつかれ! アドリブで歌ったのすごかったよ!」

「う、うん。ありがとう……」

 ソウタは悲しげに眉をひそめる。

「どうしたの?」

「良かったのかなって。いきなり歌って、みんなにも歌わせちゃったから。迷惑だったかもしれない……」

「そんなことないよ。君のおかげで劇は成功したし、マギカルトがなくてもみんなの心をつかめるってことが証明できたんだ。お客さん、みんなソウタくんたちの劇に見入っていたよ」

「本当?」

「うん、だから胸を張っていいんだよ」

 安心させようとアラトは励ます。その言葉にソウタの表情が和らぎ、

「うん!」

 と笑顔になった。

 アラトも釣られて微笑む。彼の様々な成長が、とても嬉しかったのだ。

「おーい。アラトくん、ソウタくん。ちょっといいかな」

「うわっ!」

 いつの間にか隣にいたナキリに、アラトは驚きのあまり声を出す。

「つ、水留さん! 驚かさないでよ……!」

「驚かしてないわよ。ソウタくん、衣装は先生のいるあっちで着替えてね」

「はい!」

 ソウタはぺこりと一礼すると、先生のもとへ走っていった。

「よかったわね、アラトくん。劇は大成功、ソウタくんも心から演技が好きになったんじゃないかしら」

「うん。マギカルトも大事かもしれないけど、一番大切なのは好きな気持ちなんだって、改めて分かったよ」

「友達も、でしょ?」

 ナキリは得意げな表情でアラトの顔を覗き込む。アラトは「そうだね」と微笑んだ。

「みんなー! 写真を撮るから並んでねー! 来栖さんたちも入ってください!」

「えっ! ぼ、僕は大丈夫です……!」

「なに言ってるのアラトくん! 子どもたちと一緒に頑張ったんだから入らないと!」

「わ、分かったから押さないで〜!!」

 ナキリに押されたアラトの焦る姿に、子どもたちは大きく笑った。

 

(了)

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